「あの時あぁしてあげればよかった」
筒井康隆さんの『時をかける少女』を中学生の時に読んで、感動して。その後、大林宣彦監督の同名映画(昭和58/1983年公開)を観て、あ、尾道の向こうの竹原じゃけぇ。広島はお墓もあり親類もいて、行くたびに物珍しさで町を歩き回っていましたから。
筒井康隆さんは神戸に住んでおられて、私が毎週食べに通っていた「近藤食堂」というさかな屋さんで時々お見かけしました。美味しそうに刺身を食べてらっしゃる。その向かいで僕はマグロの刺身を食べてました。市場の中にあるさかな屋さんですが、お刺身とビールなどを楽しめるテーブルが一つ置いてあって。ただ阪神淡路の震災で、ここの親父さんが調子悪くなり店は今はないんですが。
人がいなくなるとさびしい
子どもとお墓まいりにいく道中、竹原で途中下車。墓参りはいつも8月ですから、運のいいことに青春18きっぷで乗り降り放題。映画の舞台になった町並みまでは徒歩で20分の道。途中川を渡り「道の駅竹原」で夕立の雨宿りしてトイレをお借りして、散歩。
「こんな所にデカいお地蔵さんがおるわ」と子どもが言った町のどんつきには、厄除けに立派なえびすさんのお堂がある。T字路や三叉路には、祠があったり、お地蔵さんがいらしたりする。魔よけだが、ほっと安心する。
町並みなので、アトラクションがあるわけでも忍者が出てくるわけでもないけれど、忍者やお侍さんが歩いてても不思議はない。それにしても白壁と格子戸と竹垣と瀬戸内の穏やかで不思議な雰囲気がいい感じ。住んでらっしゃる方々が、なんのトクにもならないのに自分たちの町を観ていただけるように綺麗にしようとか、一輪挿しを生けてあったり。驚いてしまう。
人はおもいでだけでも生きていける
ここ来たことがある、そうデジャブ。でも大林宣彦(昭和13/1938年-令和2/2020年4月10日)監督の『時をかける少女』を観た人は映画で見てるだもんね。
ただ夢と現実って、だんだん分からなくなってくる時はあります。それで人間いいのですが。災害や戦争といったあまりにもショックな事件に巻き込まれてしまうと、その部分がある時スコンと抜け落ちてしまう。自己防衛本能のように、あれはなんだっただろう、と自分が自分の分身である人が災害に遭っているのを観てるように。阪神淡路大震災後の私自身がそうでしたから。誰も悪くはない。
「あの時あぁしてあげればよかった」と想うだけで、人と人はしあわせになれますよ。
「あ、これ瓦屋根が落ちて来たえびすさん。キャッと言われて、女の子に抱き押さえつけられて尾美としのりってイイ役ばかりだよなぁ」と愚痴っていた大林宣彦監督ファンの友だちをおもいだした。
私はこの町なら「近藤食堂」さんのような魚屋さんがありそうな気がしたんですが。また、どこかの町に探しに行こう。そうだ、友だちにもあいに行こう。
道の真ん中にある不思議な胡堂 〒725-0022 広島県竹原市本町3丁目6