わざとフェイクと知っていて流す罪
それはお金儲けのため。いつの時代も人のすることには間違いはつきものです。熊野那智大社を訪れた時に、習字好きな子どものために硯を買おうとしました。その時に教えられたのが那智黒石のウソとホントです。
那智黒石というのは三重県熊野市神川町でしか採石されない貴重な石です。およそ2000万年前頃~1400万年前頃の間に形成された熊野層群大沼累層中の黒色頁岩です。
しかしです、辞書や辞典の中に『那智黒石は日本庭園などに敷き詰める那智で採れる黒い玉砂利』と。これ間違いです。産地は新宮から那智にかけての礫浜。礫浜とは砂浜海岸と対になる名称で石の浜の海岸ということですね。
玉砂利を使って、碁石の黒を作っているわけではないのです。岩盤を板状にしたものから、碁石の直径に合わせたホール抜きをして、それを研磨して美しい碁石にしていくのです。写真の作業がその工程。
海岸にある石と硬い岩石である本来の那智黒石とは、取れる場所、つまり地層が違うといことです。それに那智の浜で取れるのは砂です、現地の海岸に行けば判ります。那智の浜に黒い石はない。それがあるのは和歌山県新宮市の佐野の浜や七里御浜。行けば判ることです。
今では敵はもう一つ
那智黒石と言いながら、ただ黒い物体を接着剤でまとめた粗悪品が中国から輸入されているのが現状だとお店の方は説明しながら、ロウソクの火にmade in China を近づけたのです。驚きますがくすぶって燃えるのです、石が。
硯の石は硬いものだと思ったら、まぁ硯を火に放り込む人はいないかもしれませんが、石炭のように燃えてなくなるって。「炭を炭でするなんて、笑い話だねぇ」と。これマガイモノの話ですからね、本物の日本で採れた那智黒石の硯は磨耗もしにくいですし、第一燃えません。
リアルブラック。那智黒石
中生層および古生層に出来あがった那智黒石は、その粒子ひとつが0.1ミクロンという、きめの細かい、緻密な粘板岩です。それだけに、自然石としての美しさはもちろんのこと、さまざまな用途の加工品として、その名を馳せてきたのです。素晴らしい石ですから、ぜひ一度本物を手にとってご覧になってください。
写真は私が熊野の高専にお世話になっていた時に、生徒さんの親戚のかたがやっておられる那智黒石の採石場を見学させていただいた時のものです。
那智黒石の産地/三重県熊野市神川町神上